Blätterはドイツ語で、Blatt(英語でleaf、つまり葉っぱ) の複数形ですが、言葉や、言葉を集めたものという意味にも使われます。
演奏会に関することや、作品についてなど、他愛もないことを折に触れて綴っています。
暖かな季節になりました。
枯れ枝にようやく芽吹いた新芽に注がれる眩しい陽光や、地平線に沈む太陽の残照が刻一刻と空の色を変えていく瞬間のひとつひとつなど、春の訪れの喜びと共に与えられるこの時季だけのやわらかな時の移ろいを、何時にもまして大切に感じられるこの春はフランスの作曲家ガブリエル・フォーレ(1845-1924)の世界に取り組んでいます。
フォーレは、日本に開国の兆しが見え始めた頃に、フランス、ピレネー山脈の麓のパミエに生を受け、その後教会オルガニストを務めながらパリで活躍した作曲家で、哀愁を帯びたチェロの名曲の数々は、皆様もきっと一度は耳にされたことがあるでしょう。
1789年のフランス革命の後に繰り返された内乱や戦争によってフランスのみならずヨーロッパ中に波及した激震を経て、1851年に始まった万国博覧会の開催によって世界から技術と産物が集結し、鉄道の普及に伴う人々の移動と情報の伝達も加速化された時代でした。近代国家へと世界が急速な変化と成長を遂げつつある中、次第に失われつつあるものの行方を静かに見定めつめつつ、70歳代に至っても尚、自身の音楽に新しい音を求めて進化させ、フランス音楽界の次世代を担う人材の育成にも力を注いだフォーレの生涯を、チェロとピアノの音楽を通して皆様とご一緒に辿っていきたいと思います。
チェリスト横坂源さんとはこれまでショパン、ブラームス、と1人の作曲家に焦点を当ててソナタと小品を聴いていただく、という機会をご一緒させて頂きました。
30代半ばというお若さながらお会いする度、ご自身の音楽への弛みない求道精神と志の高さに敬服せずにはいられない素晴らしい音楽家です。皆さまのご来場をお待ちしております。
今年も4分の3を過ぎ、いつの間にか日脚の短さに驚かされる季節となりました。
この秋はテノール歌手の石川洋人さんからお誘いいただき、ドイツ・リートの愉しみ、と題してハインリヒ・ハイネの詩に作曲したシューマンの歌曲(リート)を集めた音楽会が、東京と静岡で開催されます。
恩師フリードリヒ・ヴィーク氏との裁判沙汰にも終止符が打たれ、その一人娘クララとの結婚がようやく許されたのは1840年、その年の内にシューマンは実に120曲以上の歌曲を書き上げました。
ハイネが従姉妹アマーリエに抱いた恋、失恋、追憶、と切なく激しい心の内を、時に辛辣な皮肉も交えながらドイツの美しい自然との対話や人々の営みをも巻き込んで吐露した詩の数々。時にピアノソロの曲よりも繊細で、クララとの愛を映し込んだかのように書かれたシューマンの美しい音楽は、消え入りそうにはかない旋律(歌声)も自らを奮い立たせるように誇り高いハーモニー(ピアノ)も、情景や心情が見えるように自然に、心の奥底深く訴えてきます。
いまだコロナ禍から抜け出せない毎日ですが、石川さんの美しい歌声とのコラボレーションを通して、少しでも心を潤していただけるよう、リハーサルを重ねています。ぜひお出かけください。
秋深まりゆく今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今年は金木犀の香りに2度包まれるという思いがけない秋の贈り物がありました。自然界から思いも寄らない「生きる厳しさ」を突きつけられたパンデミック、現代に生活する人間の力にも限りがあることを思い知らされる日々ですが、その自然界から私たちは、生きるための計り知れないほど多くの恵みもいただいていることを思い起こすとき、改めて作曲家の遺した作品の根底に脈打つ「尊い生命への畏敬」に気づかされます。
昨年秋より日延べしていましたリサイタル Der Weg...道 vol.3を11月に浜松と東京で行います。大切な人への深い思慕・・私が最も心を注いでいるドイツ作品の中からベートーヴェンとシューマンのソナタを演奏いたします。
シリーズDer Weg...道の誕生秘話?については、以下クラシックニュースでご覧ください。