Kleine Blätter

Blätterはドイツ語で、Blatt(英語でleaf、つまり葉っぱ) の複数形ですが、言葉や、言葉を集めたものという意味にも使われます。

演奏会に関することや、作品についてなど、他愛もないことを折に触れて綴っています。

 

《フレデリック・ショパンの軌跡を辿って 03.April,2024》

ブラームス、フォーレに続いて今年はショパンをテーマにプログラムを組んでいます。
ピアノの為の作品に最もその才能を開花させたショパンですが、実はチェロとピアノのための作品をワルシャワ時代の青年期と、最晩年に書いています。 ピアノ・ソナタ第3番よりもさらに後に書かれたチェロ・ソナタは、昨年お聴き頂きましたフォーレの、削ぎ落としていく晩年の書法とは対照的に、旋律が縦横無尽に絡み合い、あらゆる素材が組み込まれた立体構造を持つ作品で、あの晩年の健康状態でまだこれほどのエネルギーを抱える作品が書かれていたのか・・と驚かされます。20歳で出たきり戻ることのなかったショパンの祖国ポーランドへの執着と自らの激動の人生を振り返る俯瞰した眼差しが見えるように感じています。 
プログラムのそれぞれの作品を繋ぐのは今回も歌曲。同郷の詩人たちの書いた詩に感銘したショパンは詩集をピアノの前に置き、親しい者同士の集まりで自ら歌いながらピアノを弾いたそうです。それらが書き留められることがなかった為に現在楽譜として遺されているのはごく僅かですが、その生涯にわたって相当数の歌曲を書き続けていました。
選ばれた詩はまさにショパンの身に起こった出来事を映すかのようなものもあり、マズルカのような故郷独自の舞曲のリズムに乗せたり、ノクターン風に密やかに語ったり、と同時代のシューマンの歌曲とはまた違う美しさがあります。
ショパンに限らず、政治的社会的な抑圧から日常生活の規制もあった時代には、歌うこと、踊ることは生きることそのもので、歌わざるを得ない、踊らざるを得ない、そんな人間らしい衝動に駆られる時がたくさんあったのだろうと想像したりしています。 
ショパンの生涯を追いながらポロネーズからソナタまでをお楽しみ頂けましたら幸いです。

《ガブリエル・フォーレの軌跡を辿って  10.April,2023》

暖かな季節になりました。 

枯れ枝にようやく芽吹いた新芽に注がれる眩しい陽光や、地平線に沈む太陽の照が刻一刻と空の色をえていく瞬間のひとつひとつなど、春の訪れの喜びと共にえられるこの時季だけのやわらかな時の移ろいを、何時にもまして大切に感じられるこの春はフランスの作曲家ガブリエルフォレ(1845-1924)の世界に取り組んでいます。

 フォレは、日本に開の兆しが見え始めた頃に、フランス、ピレネ山脈の麓のパミエに生を受け、その後教会オルガニストを務めながらパリで活躍した作曲家で、哀愁をびたチェロの名曲の数々は、皆もきっと一度は耳にされたことがあるでしょう。

1789年のフランス革命の後に繰り返された内乱戦争によってフランスのみならずロッパ中に波及した激震を経て、1851年に始まった万覧会の開催によって世界から技術と産物が集結し、道の普及に伴う人の移動と情報の達も加速化された時代でした。近代家へと世界が急速な化と成長を遂げつつある中、次第に失われつつあるものの行方をかに見定めつめつつ、70代に至っても、自身の音に新しい音を求めて進化させ、フランス音楽界の次世代を担う人材の育成にも力を注いだフォレの生涯を、チェロとピアノの音を通して皆様とご一辿っていきたいと思います。

 

チェリスト坂源さんとはこれまでショパン、ブラムス、と1人の作曲家に焦点をててソナタと小品をいていただく、という機をご一させて頂きました。

30代半ばというお若さながらおいする度、ご自身の音への弛みない求道精神と志の高さに敬服せずにはいられない素晴らしい音家です。皆さまのご来場をお待ちしております。

 

《ドイツリートの愉しみ シューマン×ハイネ       08,0ktober,2022

今年も4分の3を過ぎ、いつの間にか日脚の短さに驚かされる季節となりました。

この秋はテノール歌手の石川洋人さんからお誘いいただき、ドイツ・リートの愉しみ、と題してハインリヒ・ハイネの詩に作曲したシューマンの歌曲(リート)を集めた音楽会が、東京と静岡で開催されます。

 

恩師フリードリヒ・ヴィーク氏との裁判沙汰にも終止符が打たれ、その一人娘クララとの結婚がようやく許されたのは1840年、その年の内にシューマンは実に120曲以上の歌曲を書き上げました。

ハイネが従姉妹アマーリエに抱いた恋、失恋、追憶、と切なく激しい心の内を、時に辛辣な皮肉も交えながらドイツの美しい自然との対話や人々の営みをも巻き込んで吐露した詩の数々。時にピアノソロの曲よりも繊細で、クララとの愛を映し込んだかのように書かれたシューマンの美しい音楽は、消え入りそうにはかない旋律(歌声)も自らを奮い立たせるように誇り高いハーモニー(ピアノ)も、情景や心情が見えるように自然に、心の奥底深く訴えてきます。

 

いまだコロナ禍から抜け出せない毎日ですが、石川さんの美しい歌声とのコラボレーションを通して、少しでも心を潤していただけるよう、リハーサルを重ねています。ぜひお出かけください。

《リサイタルDer Weg...道vol.3 》15.Oktober,2021

秋深まりゆく今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今年は金木犀の香りに2度包まれるという思いがけない秋の贈り物がありました。自然界から思いも寄らない「生きる厳しさ」を突きつけられたパンデミック、現代に生活する人間の力にも限りがあることを思い知らされる日々ですが、その自然界から私たちは、生きるための計り知れないほど多くの恵みもいただいていることを思い起こすとき、改めて作曲家の遺した作品の根底に脈打つ「尊い生命への畏敬」に気づかされます。

 

昨年秋より日延べしていましたリサイタル Der Weg...道 vol.3を11月に浜松と東京で行います。大切な人への深い思慕・・私が最も心を注いでいるドイツ作品の中からベートーヴェンとシューマンのソナタを演奏いたします。

 

 シリーズDer Weg...道の誕生秘話?については、以下クラシックニュースでご覧ください。